手の外科について
手の外科、といっても対応する範囲は広く、指先から上腕までが治療対象となっています。
下肢、例えば足を骨折したり捻挫すると歩けなくて大変そう、ということは容易に想像できると思いますが上肢、特に指や手に障害が生じたときの障害はなかなか想像しにくいものです。当科では、そのような上肢の疾患や顕微鏡を使った再建手術を扱っています。
代表的な疾患
日常生活の中で徐々に障害が強くなるもの
1. 腱鞘炎

手のひらにある指を曲げる腱を抑えているバンドである腱鞘で腱がひっかかるようになる。ばね指ともいいます。
初期であればステロイドを腱の滑膜にうまく注射すれば楽になることもありますが、女性の場合年齢とともに注射では再発を繰り返すため手術が必要となることが多くあります。
手術は局所麻酔で5~10分で終わります。4日目でガーゼがとれ、手を洗うことが可能となりますが抜糸は2週間となります。
2. ドケルバン病

腱鞘炎のひとつですが、親指を伸ばしたり外転する腱の腱鞘で生じる障害です。親指を曲げたり伸ばしたりすると手関節の親指側に激痛を訴えることが多く、基本的には手術で腱鞘を切開することが必要となります。
手術は局所麻酔で行いますが10~20分ほどかかります。腱の走行が人によってまちまちで、確実に腱を開放することに時間がかかることが多いためです。
3. 手根管症候群

中年期以降の女性に多く、親指から薬指にかけてしびれが始まりますが、進行すると親指を動かす筋肉が麻痺してくるので、ものをつかむことが困難となります。
内服のみでしびれが楽になることもありますが、ほとんどがまれで、手術が必要となることが多い疾患です。
手術は局所麻酔で10分程度で終わりますが、しびれがとれてくるのは術後数か月を必要とすることが多いです。
4. 肘部管症候群
肘の内側の後ろを通っている尺骨神経が圧迫されて薬指と小指のしびれが生じます。通常は進行性で、徐々に指を開いたり細かい作業がしにくくなり、最後には筋肉が萎縮して非常に強い障害をきたします。
治療は基本的には手術となりますが、当院では2泊3日の全身麻酔で行っています。手術は1時間程度で終わりますが、術後は1週間ほど肘を固定して神経の回復を促します。
神経の回復には数か月~数年を要することが多く、早期発見と早期の手術が必要です。
5. 母指CM関節症


女性に多い病気で、親指のつけねの関節(CM関節といいます)が変形して生じる病気です。ペットボトルの蓋をあけると強い痛みを感じることが多く、進行すると親指を使うことが非常に困難になる病気です。
初期であれば安静や装具で痛みをおさえることが可能ですが、進行するとステロイドの注射で痛みをとったり、手術で力いっぱい親指を使うことができるように関節を固定する手術が必要となることがあります。
当院での手術は全身麻酔で行い、入院は3日間です。術後2週間から親指を動かす訓練を開始しますが力をいれられるようになるのは3か月ほど要します。
6. へバーデン結節・ブシャール結節
指の第1関節(DIP関節)、第2関節(PIP関節)が腫れていたくなる病気です。
女性に多く、起床時に指が動きにくかったり手を使うと痛くて生活に支障を生じます。内服による治療やテーピングなどの保存的治療が主になります。
7. デュプイトレン拘縮

男性に多く、手のひらや指のつけねにしこりができ、徐々に指が曲がって伸ばせなくなる病気です。
指の曲がりが30度を超えると手術が必要となります。
怪我など(一部)
1. 橈骨遠位端骨折・尺骨茎状突起骨折
手をついて転倒することにより生じる骨折です。
腕にある2本の骨が手首側で折れて変形をきたし、日常生活に著しい障害が生じます。骨が弱かったり、関節内まで折れてしまっている場合や早期社会復帰を希望される方には手術を行います。
手術時間はおおよそ1時間程度で、入院は3~8日ほどとなります。


2. 上腕骨(遠位端)骨折
肘を伸ばしたまま転倒したり、交通事故などで生じる骨折です。
肘関節にかかわる部分の骨折であるため、適切な治療を受けないと肘の機能障害により、日常生活に大きく影響します。
骨折の形や部位によって手術方法は変わりますが、基本的には入院後、全身麻酔で手術を行いますが、小児(3~12歳)と成人では手術方法が異なります。
a)小児では成長線があるためスクリューが使えず、医療用のワイヤーを使って治療します。


b)成人ではチタン製のプレート、スクリューで治療します。


3. 腱性マレット

指先をひっかけたり、ぶつけたりして指の第一関節(DIP関節)が自力では伸ばせなくなる怪我です。
指の先端をのばす伸筋腱が断裂していることが原因で、原則的には装具を2か月しっかり装着して治療しますが、調理師の方など装具をつけることが困難な患者さんには日帰り手術でワイヤーで固定します。
4. 腱断裂
指を伸ばす腱や曲げる腱が切れると手を使うことができなくなってしまいます。伸筋腱については日帰りでの手術も可能ですが、屈筋腱の断裂の場合入院の上、手術を行い翌日から曲げる練習をリハビリで行います。
5. 神経断裂
鋭利な刃物などで指~前腕の神経を切ってしまうとそのままでは治癒せず、感覚障害や運動障害が永続的に残ってしまいます。
手~指でしたら日帰りで顕微鏡を用いた神経縫合を行いますが、前腕などでは入院の上、全身麻酔での手術が必要となります。
6. 切断指あとの欠損(親指など)
指を切断して再接着が困難であった場合、指が欠損したままになります。利き手なのか、どの指が欠損しているかにもよりますが場合によっては足の指を用いた再建手術を行っています。
特に、母指の欠損は障害が大きく、再建手術の絶対適応となります。


最後に
当院ではいままで述べたような疾患・怪我のほかにも手の外科(指~上腕)の治療・手術や顕微鏡を用いた再建手術をしています。困ったことがあるようでしたら一度ご相談ください。
担当常勤医
須賀 久司(すが ひさし)
平成18年より住み慣れた埼玉県での整形外科医局を離れ、大阪市立大学形成外科で5年間一般形成外科および悪性腫瘍切除に伴う再建外科を学び、その後大阪の京セラドームの前にある多根総合病院整形外科で3年間を過ごして埼玉に戻ってまいりました。
役職 | 整形外科副科長 |
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出身大学 | 山梨医科大学 |
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